
クリスマスが近づくにつれ、寒さも一層きびしくなってきましたね。外は寒くても、暖かいお家の中でクリスマスを迎えるため、ツリーを飾ったり、プレゼントを用意したり、パーティのメニューを相談したりしていると、気持ちまで温かくなるようです。
クリスマスまであと10日あまり…
今日は、”ピアノの魔術師”と呼ばれた”大ヴィルトゥオーソ”、フランツ・リストが、晩年に孫娘のダニエラ・フォン・ビュローのために書いた”クリスマス・ツリー”という曲集をご紹介します。
クリスマス・ツリー(S.186/R.71 A267)は、1874年から1876年にかけて書かれ、その後改訂を重ねて、1882年に現在知られている稿が出版されました。
全12曲で、1曲ずつタイトルが付けられています。最初の4曲は、伝統的なクリスマス・キャロルの編曲です。第3曲「飼葉桶のそばの羊飼いたち」、第4曲「誠実な人々よ来れ」は、クリスマスといえば必ず耳にする親しみやすい曲です。あの超絶技巧な作品を作り出したリストの曲とは思えないほどに素朴で可愛らしい曲です。
しかし、第5曲、第6曲と弾き進めていくと、徐々にヴィルトゥオーソらしい技巧を凝らした箇所や、ダイナミックな曲のスタイルや調性の複雑さなど、短く簡素な誰にでも弾けるクリスマス・キャロルではない事を実感される事でしょう。
後半は、クリスマスというより、リスト自身の人生を回想するかのような曲となっています。第7曲の「子守歌」は、一人静かに郷愁にふけるようなイメージの曲です。第10曲「昔々」は、リストの終生の伴侶であり、リストの音楽や生き方に大きな影響を与えたカロリーヌ・フォン・ザイン=ヴィトゲンシュタインと出会った頃を回想した作品であり、第11曲「ハンガリー風」は、リストの故郷ハンガリーをイメージした行進曲です。第12曲「ポーランド風」は、カロリーヌの故郷ポーランドをイメージしたマズルカで、この曲集のフィナーレを華やかに締めくくっています。
リストは、”クリスマス・ツリー”について、「私の若き日の感情の気取りのないエコー」であるとカロリーヌに宛てた手紙に書いています。
孫娘への愛情が込められた曲集の中に、自身の人生を重ね合わせていたのでしょうか?
どの曲も温かさとやさしさにあふれ、弾いていると幸せな気持ちになります♪
クリスマスの日まで毎日1曲ずつ弾いてみるのも楽しいですね♪
リストの違う一面が垣間見られるすてきな”クリスマス・ツリー”、
ぜひ今年のクリスマスに弾いてみて下さいね!
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⭐︎ダニエラ・フォン・ビュロー:リストの娘コジマとドイツの指揮者ハンス・フォン・ビュローの間に生まれた娘。コジマは後にワーグナーの妻となる。この曲集を贈られた当時、ダニエラは16歳だった。
♫クリスマス・ツリー S.186/R.71 A267(Weihnachtsbaum/Christmas tree)
⭐︎第1曲:古いクリスマスの歌 (an old christmas carol)
⭐︎第2曲:おお聖なる夜 (o holy night!)
⭐︎第3曲:飼葉桶のそばの羊飼いたち (the shepherds at the manger)
⭐︎第4曲:誠実な人々よ来れ[神の御子は今宵しも] (adeste fideles)
⭐︎第5曲:スケルツォーソ[ツリーに点火するとき] (scherzoso~lighting the candles on the tree)
⭐︎第6曲:カリヨン (carillon)
⭐︎第7曲:子守歌 (slumber song)
⭐︎第8曲:古いプロヴァンスのクリスマスの歌 (old provencal christmas carol)
⭐︎第9曲:夕べの鐘 (evening bells)
⭐︎第10曲:昔々 (formerly)
⭐︎第11曲:ハンガリー風 (in hungarian style)
⭐︎第12曲:ポーランド風(マズルカ)(in polish style)
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♫https://www.youtube.com/watch?v=3g-Wsjv8ia0
楽譜の購入はこちらから⇨https://books.rakuten.co.jp/rb/5885608/
無料楽譜のダウンロードこちらから⇨https://imslp.org/wiki/Weihnachtsbaum%2C_S.186_(Liszt%2C_Franz)