
もうすぐ4月🌸桜が咲き、春の風が感じられるこの季節になると、なぜか無性にシューベルトの音楽が恋しくなる…♪
先日のレッスンで、シューベルトのソナタをレッスン中の生徒さんの演奏を聴きながら、”ああ、そろそろシューベルトの季節だな〜”と思っていると、レッスンの終わりに、その生徒さんも、”春になると、シューベルトが弾きたくなるんです♪”と言われたので、自分以外にも同じように感じる人がいるのだなと興味深かった。
私にとって、”フワッ”と春の風を感じる時に浮かんでくるのは、”ピアノソナタ第13番 D.664 イ長調”である。1楽章の出だしのアウフタクトがそっと吹く風を感じさせ、その後、現れるイ長調の主題のメロディが始まると、目の前に広い野原が広がるような感覚を覚える。それは、寒い冬をじっと耐え、春を迎えようとする大地にサ〜っと風が吹き、新緑が芽吹き、花が次々と美しく色づいていく光景を連想させるようでもある。
シューベルトの音楽は、素朴で自然体だ。メロディはシンプルで誰にでも親しみやすく、ピュアな響きは聴いていて心地よい。しかし、余計なものを削ぎ落としたようなスタイルでありながら、曲全体を通して、何度も同じフレーズを繰り返す事により、曲調は単調なものになっていき、長くて退屈な曲になってしまう恐れもある。実際に弾いていても、”延々と繰り返されるフレーズをどう弾いたら良いのか?”シンプルなだけに悩ましく、”春風のよう”などと呑気な事を言っていられるのは最初のうちだけなのである。
シューベルトの世界を知るための手がかりを求めてヴィルヘルム・ケンプの演奏を聴いてみた。確かに、特別な事はせず、慎ましやかなメロディーを淡々と歌わせている。”何度も現れる繰り返し”‥にもかかわらず、ケンプの演奏には長くて単調といったイメージはなく、聴いていると、「次第に包み込まれるような広大な音の世界」が広がっていくようだ。そして、演奏が終わると、”ハッ”と夢から醒めたような気持ちになり我に帰る。
‥シューベルトは、この広大な音の世界を作り出すために、繰り返し繰り返しシンプルなフレーズを重ねていったのだろうか?
シューベルトに魅かれて楽譜を手に取り鍵盤に向かう🎹何度弾いても捉えどころがなく、次第に最初のトキメキは色あせていく。ついにあきらめて楽譜をしまいこむ。‥しかし、またどうしてもシューベルトの曲を弾きたくなる。シューベルトを初めて弾いた10代の頃からずっとその繰り返し…
春風にのって、シューベルトは今年もやってくる。人懐っこい顔でやってきて、”僕を忘れないでね”と言わんばかりに大きな課題を置いて去っていく🎶
私にとって、シューベルトは永遠の片思い…(?)なのかもしれない♫
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ヴィルヘルム・ケンプ:Schubert : Piano Sonata No.13 D.664 in A