
新型コロナウィルスの影響で世の中が大きく変わろうとする今、音楽の伝え方もまた変わらざるを得ない状況となっている。
数ヶ月の自粛期間中、レッスンも休講となり、生徒の皆さんと会うことができない寂しさ、もどかしさを感じながら、”これからどうすればいいのか?”と自問自答を続ける日々が続いた。
そして、遂に「オンラインレッスン」を開催することを決めた。
これまで、piaVie! のレッスンでは、”生きている楽器を演奏し、その響きを楽しみ、自分だけの音を作っていくこと、マンツーマンで生徒さんの個性を生かしながら、共に一つの曲を作り上げていくこと”を大切にしてきた。”サロンの和やかな雰囲気”、”グランドピアノのダイナミックな響き”、”レッスン中に先生の指から生まれる音や表現を直接体験すること”など、言葉では説明できない学びや、高揚感、充実感を味わうことができる。そういう”生きたレッスン”を目指してきた。
しかし、コロナは、そのような piaVie! が最も大切にしてきたこと、レッスンの根源に関わることをあっさりと覆してしまった。
このままでは、レッスン自体を続けていくことができなくなる…
今まで大事に育ててきたレッスンの絆が途絶えてしまう…
生徒さんとも会えなくなってしまう…
このままコロナによってもたらされた社会生活の分断の波に飲みこまれておわってしまっていいのか…?
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‥ふと、ドイツに留学したばかりの頃のことを思い出した。当時はまだ、パソコンはおろか、FAXすらない時代で、電話も最初の頃は直通ではなかったように記憶している。見知らぬ異国で、18歳の外国人の居場所などなく、ただ孤独と向き合う生活だった。今思えば、私自身は、あの時の方がずっと世の中から分断されていたのかもしれない。孤独な外国生活を支えていたもの、それは”尊敬する師から受ける熱意あふれるマンツーマンのレッスン”、”学ぶほどに広がっていく音楽の世界”、”ピアノを弾く楽しみ”、”本場ヨーロッパで音楽を学ぶ喜び”だった。ひとりぼっちだったけれど、夢があふれていた。
そんな思いを日本で応援してくれている家族に届ける手段は、「手紙」だった。
”届くまでに一週間のタイムラグがあるコミュニケーションツール…”
でも、いつも話したいことがたくさんあって、毎日のようにその思いを手紙に書き綴った。
日本とドイツという遠く離れた距離、思いが届くまでには時間がかかる… だが、その手紙のやりとりが、孤独と戦いながら夢を追う私を勇気づけ、異国に子を旅立たせた親の心を慰めたのだった。
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”たとえ、顔が見えなくても、声が聴こえなくても、心がつながることはできる…”
”それならば、顔が見えて声も聴こえるオンラインでのコミュニケーションにはより様々な可能性があるのでは…?”
そう考えていくうちに”オンラインレッスン”という新しい方向性が見えてきたように感じた。
‥今後はおそらく、オンラインレッスンや、ネットでの非対面のコミュニケーションが主流になっていくのだろう。
しかし、私は、オンラインでのコミュニケーションも、”ドイツ時代の、一週間のタイムラグ付きの手紙のコミュニケーションが形を変えたもの” だと考えている。
コミュニケーションのスタイルが変わることは、人間が人間らしさを失っていくことではない。
ネットを通していても、”人が主役”、これまで築いてきた人間関係、心が通いあったつながりの上にある手段だと思う。
だから、便利さだけを重視してオンラインを利用するのではなく、画面の向こう側にいる人のことを思いながら、むしろ、対面で伝える時よりももっと "一人一人の心にダイレクトに響くような伝え方" をしていかなくてはならないだろう。
いつの時代も、音楽は常に進化してきた。今ではクラシックと呼ばれる”バッハもベートーヴェンもショパンも”、彼らの生きた時代には常に斬新なチャレンジをしながら新しい音楽の世界を切り開いてきたのだ。そして楽器もそれと共に進化してきた。その中から、新しいピアノの奏法や表現方法も生み出されてきた。
彼らの音楽を受け継ぐ私たちは、これから"オンライン"という新しいスタイルと共に、”生きた音楽”、”生きたレッスン”を、デジタルツールを通して守り伝えていくという課題を突きつけられている。
”たとえ遠く離れていても、心はつながっている。音楽は時空を超えて人の心にダイレクトに届くものだと信じている。
それこそ、最も人間的なコミュニケーションなのではないか…?
そう考えると、これからの時代、音楽は、一層人々の心のよりどころになると思う。”
”オンラインレッスン”という新たな挑戦は始まったばかりだ🎹🎶